弁護士の窓からBlog

海外法律事情(2)

久しぶりの更新となりました。今後も不定期に更新したいと思います。よろしくお願いいたします。

今日は、お隣韓国の破産制度の動向についてです。

韓国の裁判所では、2011年から、破産事件における同時廃止制度の運用を止め、全件について原則として破産管財人を選任することとしています。同時廃止制度は、個人事業主や会社役員等ではない一般消費者が自己破産をする際に、日常生活を営むにあたって必要な一定の財産以外に資産と呼べるようなものがない場合に、裁判所が破産管財人を選任することなく破産手続きを終了させる制度のことをいいます。 裁判所が破産管財人を選任して管財事件とする目的は、1つには破産者の資産(日常生活を営むにあたって必要な一定の財産を除く。)を売却してお金に換え、そのお金で債権者に配当するという作業を破産管財人にしてもらうことと、もう1つには破産者に免責不許可事由がないかどうかを破産管財人に調査させてこれを裁判所に報告させること、があります。他方、同時廃止事件の場合は、破産者の財産が破産者の手から離れて換価されることはありませんし、免責不許可事由の有無についても、裁判所が破産者本人から事情聴取をして直接判断します。ただ、その場合、裁判所が免責不許可事由の有無を根掘り葉掘り調査するのはまず不可能です。そこで、裁判所の判断を誤らせないためにも、破産者本人、破産者の代理人である弁護士及び書類作成者である司法書士は、正直かつ正確に破産の経緯等を申立書に記載しなければなりません。免責を受けたいがために申立書に事実と異なることを記載するのはもってのほかですし、そのこと自体が免責不許可事由に該当すると裁判所に判断される可能性もあります。

では、何故韓国では同時廃止制度の運用を止めたのか。それは、1つには破産者や弁護士、司法書士(韓国でいう「法務士」)によるずさんな申立てが理由とも言われています。破産者側が、自分の資産等を申立書に正確に記載しないことが多々あり、その全てを裁判所が調査することは不可能であるため、代わりに破産管財人を選任して免責不許可事由を調査させることとしたとのことです。

先進諸国の中で同時廃止制度を採用していたのは、実は世界でも日本と韓国だけであったので、韓国が全件管財主義に移行したのは世界の破産制度から見ればごく普通の流れかもしれません。 しかし、それが申立ての不備を原因とするものであれば、対岸の火事とはいえないように思います。日本でもこのようなずさんな破産申立てが増えるようなことがあれば、同時廃止制度の廃止という事態を招く可能性もあるわけです。同時廃止事件の予納金(=裁判所に納める手数料)は約1万円であるのに対し、管財事件の現在の予納金は約20~30万円となることが多いですから、同時廃止制度の廃止は、予納金の高額化、すなわちお金がなければ破産もできないという形となって国民に跳ね返ってくる危険性があるように思います。

破産者本人が申し立てる場合であっても、弁護士や司法書士が申し立てる場合であっても、やはり破産申立てには細心の注意を払いたいところです。

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